コラム Vol.11:スクーターのメンテナンスに思うこと
日常のメンテナンス
近年、街中で見かけるバイクの多くがスクーターになってきているように思える。それはスクーターがツーリングなどの趣味から通勤・通学・買い物など様々な用途に対応でき、操作が簡単ということが大きいだろう。
最近では輸入スクーターもよく見かけるようになってきて、特にイタリアンスクーターはルックスが個性的なので目立つ感じがする。
イタ車は国産車と比べて「何か違うの?」、「壊れやすい?」などとよく聞かれるが、基本的な構造は国産スクーターとほぼ同じ性能かつ品質も以前に比べて格段に向上しているように思える。ただ国産車と比べて製品の個体差があるため、私も納車整備は時間をかけて細かくチェックしている。
さて、今このページをご覧になっている皆さんで通勤や通学、仕事で忙しく、なかなか点検に持って行く時間が取れないという方も多いのではないだろうか?ただ毎日乗るからこそ、日頃のメンテナンスが重要となってくる。
たとえばタイヤが摩耗限度を超えていると違反キップを切られたり、走行中に破裂して危険なのはもちろんのこと、レッカー費用が発生したり、場合によってはホイールを壊してタイヤ交換の何倍ものお金がかかってしまうこともある。
「あの時、タイヤ交換していれば1万円で済んだのに・・・。」なんて経験をした方もいるのでは?自動二輪車(251cc以上)の場合、車検があるので決まった時期に細かな点検を行うことができる。ところが軽二輪車(250cc以下)の場合だと車検もなく、忙しいとなかなか点検に来ていただけないお客様がいるのも事実。
壊れて動かなくなってしまうのはまだしも、ブレーキ関係の整備不良は自分が転んで痛い思いをするだけでなく、他人を巻き込んでしまう恐れもあるので要注意!
では日常のメンテナンスって何?
ということで、まず基本は運行前点検。免許取得の際に必ず習っているとは思うがヘッドライトやブレーキランプなどの灯火類、ブレーキレバーの遊び・効き具合やタイヤ空気圧の作動確認。
次にメーカーで定められた走行距離及び時期によるエンジンオイルの量や、ブレーキパッド残量、冷却水レベルなどの確認。とりあえずよくわからない場合は販売店に持ち込むのが確実だろう。
タイヤの空気圧が低いと燃費が悪くなったり、ハンドリングに影響がでたり、パンクや偏摩耗の原因になったりといいことはないので、給油のついでにでもタイヤの空気圧を確認するようにして欲しい。
ブレーキに異常を感じたときは自分で作業せずにショップに修理を依頼しよう。ブレーキ関係は重要保安部品のため、整備士資格がないと作業を行ってはいけないことになっているからだ。
また、洗車は意外と役に立つもので、「タイヤの溝が減っているなあ」とか「ここのネジがゆるんでいる」とか「ここはこんな構造になっているのか」など、普段何気なく乗っていて気づかないないようなことを発見できるし、何よりバイクもキレイになるし一石二鳥(?)だ。
まぁ、バイクは人の体と同じで定期的に健康診断(整備点検)を受けるようにしたい。オイルは血液であり、汚れてくると体(車体)に悪い。それに年をとると体力(出力)も徐々に落ちてくるのでサプリメント(オイル/ガソリンなどの添加剤)などは有効かもしれない。 そういえば私自身の体もメンテナンスしなければ・・・(苦笑)
これからの車両メンテナンス
最近は世界的に排気ガス規制が厳しくなり、新しいモデルの殆どはFIと呼ばれるフューエルインジェクション(電子制御燃料噴射装置)を採用している。これは電子制御により適切な燃料噴射量をエンジンに供給する仕組みだ。
一般のユーザーで整備も上級者になってくると、駆動系やタイヤの交換、キャブレーターのオーバーホールなどを自分の行っている人もいると思う。しかし今後はフューエルインジェクションの車両が増えてくるため、個人レベルでの作業はなかなか難しくなってくるだろう
現行モデルの殆どがインジェクション車となるばかりか、サスペンションなどの足回りやコンピューター制御にてオートマチックを実現しているモデルなどのように各所に電子制御システムを採用したモデルが増えつつあるのが現状である。
・・・ということはそれらの車両を乗り続けるためには、それぞれに対応したテスター/診断機が必須となってくる。 それらの診断機がないと故障診断はもとより、スロットルケーブルの交換などすら難しい状況になりつつある。アプリリアやピアジオなどのそれぞれのメーカー専用のインジェクションテスターなどの高価な診断機を個人で揃えるのはかなり厳しいであろう。
今後発売されていくモデルは必然的にインジェクション採用車となるので、新車を購入する際、販売店の各種電子制御システムに関する知識や、そのモデルに対応する各種診断機を備えているかなどが、販売店選びの重要なポイントになってくるだろう。
私自身は結構アナログな人間なので、「キャブレーターのような機械式が好きだなあ」なんてことも思いつつ、インジェクションテスター片手に作業にいそしむ今日この頃なのであるが・・・。
文・吉田誠 / 初出 Scooterfan Vol.52