コラム Vol.10:ちょっと一息、イタリアンスクーター雑感
イタリアのスクーターカスタムは「走り志向」
イタリアンスクーターでは殆どといって良いほど、外装カスタムパーツは有りません。おそらくノーマルでも充分に個性がありセンスも感じられるデザインなので、外装をカスタムする必要がほとんど無いのでしょう。
そのかわり「走り」に関わるチューニングパーツは数多く出ています。プーリー、クラッチ、カムシャフト、ハイギア・・・・etc。イタリアではサンデーレース(一般の人が仕事休みの日曜日に参加できるレース)が盛んで、自分なりの乗り味を変えて楽しんでいます。マロッシなどが有名なチューニングパーツです。
この「走り志向」とも言えるイタリアンスクーターのカスタムの方向性は、外装に重きをおいたカスタムを好む日本の国産ビッグスクーターユーザーとは対象的な趣きがあります。
イタリアではジェットタイプヘルメットが主流
イタリアンスクーターのメットインスペースは、ジェットヘルを基本に設計されているものが多いです。おそらくスクーターはヘルメットも含めたコーディネイトにも拘り、お洒落に乗るものとして定着しているからと思います。
イタリアのべスパが発祥のイタリアンスクーターの多くはオートバイ用のライダースーツではなく、カジュアルな服装で乗ることが出来るお洒落な乗り物なのです。
ファミリービジネス
日本でファミリービジネスと言ってもあまりピンときませんがイタリアでは一目おかれるほど重要な要素の一つです。
専門誌「ファミリービジネス」なども有り、スクーター関連ではマラグーティやマロッシなどが代表的なファミリービジネス企業となります。日本で言うと芸術を代々家業として継承する「家元」のような感じでしょうか。イタリアでは単にビジネスを継承するというよりも、そのブランドの哲学を継承しているようです。
リラックス型よりスポーツ型。背筋を伸ばして上品に。
日本のビッグスクーターのライディングポジションの多くは、足を前に投げ出して背中を後ろに倒して乗る、まるでソファーに腰掛けてテレビでも見るようなリラックス・ポジションなのに対し、ベスパ GTS250ieのようにイタリアンスクーターのライディングポジションは、背筋を伸ばして馬に乗って操るようなスポーティーな物が多いです。このイタリアンスクーターのポジションは瞬時に車体を操るのに適しており、危険回避にも役立ちます。
「日本車は止まるために走るのか!?」
仕事柄、よくイタリアの人たちと話しをしますが、そういった中で印象に残ったイタリア人ならではの表現を幾つかご紹介します。
・イタリアのエンジンメーカーの人とエンジン音について話しをしていた時、日本車のエンジン音との違いについて「イタリアのエンジンは、いい音を奏でているだろう?これが乗っていると非常に心地が良いんだよ」なるほど確かに心地よいサウンドでした。
・イタリアのレース関係者と話していた時、そのチームは優勝を逃したのですがその関係者は「このエンジンの中には鉄の馬が何頭も入っていて、みんながんばったんだ。この馬は私の馬であり、愛しいんだ」と言っていました。
なるほど、馬力(ホースパワー)と言いますよね。こう思うとバイクにも血が通っているように思えます。
・イタリアのメーカーの人に信号で止まるときシートが低いほうが楽だというと「バイクは走るものだから、走っているときに一番良いポジションになっている。若干シートが高くても立ちゴケするほど高くは無い。日本車は止まるために走るのか?」なるほど、ごもっともです。
以上イタリアンスクーターについての様々な雑感をまとめてみましたが、とりとめのない文ながら、同じスクーターでもイタリアと日本ではスクーターをとりまく文化が 異なっているのがお分かりいただけたと思います。
コネクティングロッドではそんなイタリアならではのスクーター文化に育まれた、イタリアンスクーターを豊富にご用意しています。ぜひお気軽にご来店ください。
文・平井健三